2009 ギャラリーなつか 個展



めぐりゆく
 ギャラリーなつか個展によせて









毎日の生活の中で  めぐりゆく  という言葉に 結びつく こと もの と出会う。
生まれ育った 千葉 外房 上総一ノ宮での日々。
長くゆるやかな湾曲を描く 九十九里浜に佇めば よせて返す波のなかに 生と死のめぐりを感じる。それは 今、生きるための礎でもあり 太古からの流れでもある。









 目の前に落ちる 貝 小石 木ぎれ  どこで生まれ どう旅して 私の目の前に流れ着いてくれたのであろう。
どこまでが水平線で どこまでが空なのかわからない 深く 吸い込まれてしまい様な恐怖をわき上がらせる 夜の海 波の音はより 心を吸い取ろうとする。 
空を見上げれば 青い空に ほわり 浮かび消えていく 雲。









 何度見ても 生きてて良かったと 喜びを伝えてくれる すがすがしい 九十九里浜からの朝日と 空のグラデーション。
燃える様に真っ赤で力強い夕日は 周囲を全て焼き尽くし これから始まる夜への入り口となる。
やわらかなオレンジ色の密やかな情熱を称えて 静かに九十九里浜から わき上がってくる 月。波に写った その光は 小さく揺らぎながら 喜んでいるかの様。









 水の入った田んぼは 遠く広く続き 丸で鏡の様に 空を映し 境界線を無くす。
稲刈りの近づく頃には さわさわと 心をくすぐる音を立てながら 目に見えない風の動きを教えてくれる。
木々に埋もれれば どこからか聞こえる小さな生き物の息づかいと どこからか見つめる小さくも力のある眼差し。








 木漏れ日が生みだす 光と影の 踊り 時折、雲が太陽を見え隠れさせながら 演出をする。
時には生き物の遺骸が目の前に現れ そして 輪廻転生 生がつながっていくことを まざまざと 心に響かせてくれる。
日々の周囲の自然が 私のめぐり を培わらせてくれる。全てが作品への刺激となる生活。








 アートと人との関わりも 大事な活動として生きている人間にとっては アトリエに通って下さる方達との めぐりも 大きな刺激である。
アートを通じて こどもの成長に寄り添うこともある。
アートを知ったことで 新たな世界を知った方もおられる。
表現をすることで 生きた証しを残し この世から旅立たれた方もおられる。

 その出会いは 必然であり 千葉に先祖代々住まう 人との結びつきまで 時に明かしてくれることさえある。 

 娘を カラダに宿し 産み落としたときに感じた 人間が繰り返してきた 生と死の繰り返し、こどもの成長を抱きしめながら感じる ぬくもりは 生きる神秘を持ち 心から湧き出てくる喜びを実感する

 人として 当たり前のように出会う、こと ものの中に  喜びを感じ 「めぐりゆく」 この世を表現しながら 生きていきたい そう 感じるのである。



こまちだ たまお